土方が、携帯が欲しい、と言い出した。 まあ、賛成だ。土方も前より外に出て行くようになったし、いつでも連絡は取れる方がいい。 いらないと言ってたのは土方で、坂田は元々不便だと思ってた。 (にしても、何でいきなり・・・) けど、それもこの家を居場所だと受け入れ始めた証拠だと思えばいい感じだ。 「おい、どれがいんだよ」 携帯ショップの中でずらり並んだモデルを見ながら、振り向くと土方がいない。ええっ。 焦って探すと女性店員につかまっていた。 「音質もびっくりするくらいよくって今お薦めの機種ですよ」 「はァ・・・携帯で音楽聞くんですか」 「音楽はあまり聞かれない方ですか? でしたら、こちらの最新モデルなどいかがでしょう。 ムービーもすごく綺麗に撮れますし」 「いや、音楽はすごく聞くけど、携帯で映画が撮れるんですか」 うわああ、とその手を掴んで引き離した。 「恥ずかしいからやめてくんないいい! お前過去からタイムマシーンにでも乗ってきたの!」 「通話ができりゃいんだけど・・・・」 「今はもう色々ついてくんの! ったく、さっさと選べよ」 土方は、眉を寄せて、機種の説明を外国語でも読むような表情で、見つめていた。 「もう、お前のと同じでいい」 それから、そんなことを言う。裏返したりしていた最新モデルをちょっと止めて、土方を見た。 「・・・・えっ・・・俺もちょっと前に変えたばっかだけど、1つ古いぜ」 「何でもいい。どれだよ」 「えーと・・・・・・ああ、これこれ」 黄色とピンクと黒の3種類が並んでいた。 俺が黒だからてめェは別にしろ、というと、俺も黒がいい、といってそんなとこだけ聞かなかった。 いよいよ、ちょっと顔に片手を当てる。 (・・・・・お揃いじゃん・・・) お前は彼女かよ。 ・・・ったく、と自分の携帯を見下ろし、ふと、不在着信の知らせを見た。 「・・・・・・」 こないだから2回、かかってきているものだ。金時の言葉を思い出す。 「・・・・どうかしたのか」 土方が珍しく遠慮がちに、こちらの顔をすこしうかがうようにした。 何でもねェよ、後ろのポケットに仕舞って、契約の際の説明にいちいちアホらしすぎるツッコミをする土方を黙らせ、頭を抱えながら店を出る。もうやだほんと恥ずかしい。しかし、 その半面、その無知さ加減を見ていると、胸あたりがぎゅうと柔らかくなりかけて、すこし慌てて歩道を渡った。 「あっ、てめ、置いてくなよ! 俺帰り道わかんねんだから」 ああ、そういうセリフもやめろお前! 「おい土方。あいつがてめェと電話で話してェとよ」 土方は、自分を悪戦苦闘させる、ぜんぜん意味わからん携帯にいい加減腹が立って、床に投げていた。それに背を向けぐたりしていると、高杉の影が落ちた。 あいつ? 真っ先に浮かんだのは金時で、えっ、とうつぶせのまま振り返る。 高杉はもぐもぐしていた口からぶどうの種を出した。(・・・てめ、何一人でぶどう食ってんだよ・・・) 自分の連絡先を知りたいのは例の彼女らしい。「ああ何だ・・・・別にいいぜ」、あお向けになって答えると、「何だって誰期待してたんだ」、 その言葉にチクっとくる。 そのまま、・・・はー、とうつぶせになれば、自分の部屋まで一回転してたどりついた形になった。 頭だけドアの隙間に入れた(坂田いわく「げえ! ホラーっぽい」)格好のまま、初コ−ルに出る。 「土方くん? ねえ、聞いて。昨日いい曲ができたんだ。この前の土方くんのピアノ聞いて煽られたみたい」 「俺もあの後、スロウな曲ばかり練習した」 「ほんと? また聞きたい」 「俺も」 ピアノに視線をやって、目を細める。しばらく、そうしてピアノの話をした。終わってしまうと、間が漂った。 近づく足音に目を向ければ、部屋からはみ出た自分の下半身を高杉がまたいでいく。 「・・・・あーのよ、アンタ、本当に高杉の彼女ってわけじゃないのか」 「付き合うだけが形じゃないよ」 「そりゃ、そうだけど・・・」 「これが恋愛かって聞かれると悩むけど。好きだよ」 彼女のその言葉は、かすれがちないい声に真っ直ぐ耳に沈んでくる。 高杉のこと、好き? 彼女の質問が頭に甦って、胸の中でゆらゆら揺れた。 「それ、高杉に言ったこと、」 「あるよ。一度は考えてくれたんだけど、もう、いつものあの調子。目に浮かぶでしょ」 彼女が笑った。この女性は、魅力的な人だ。あんな綺麗な曲を作るんだから、感性だってきっと。 高杉は、何で彼女にしないんだろう。 「わかってるって・・・・ねえ、今さ、バーの開店前で金時がいるんだけど。代わりたいって言ってるけどい?」 (えっ。) 今度こそ、どき、と心臓が跳ねた。 ・・・いいけど、と小さく答えながら、部屋の中へ虫みたいに這いすりあがってドアを足で閉めた。ガサ、と鳴ってる通話口から彼を、待つ。 「もしもし? 土方くん?」 ああ、金時の声だ 「こないだは突然ごめんね。ピアノすごかったよ。頭持ってかれた」 「・・・ああ」 「騒がしくしちゃって、高杉怒ってなかった?」 「・・・まあ、片付けは全部俺と坂田がやった。あいつソファーでずっと機嫌悪く寝転んでて」 「ハハ。目に浮かぶ。土方くんも一度ライブおいでよ」 「ああ・・・」 「みんな、また土方くんのピアノ聞きたがってるしさ」 うん・・・、という返事が聞こえるか聞こえないかほどになっていく。 すこし、ザーと雑音の間が引いた。それが10秒続いた後、突然、すこし低い金時の声。 「・・・・ねえ、二人だけで会わない?」 知らず下がっていた目が、ぱ、と棚の中段あたりへあがった。進展しそうな予感に胸が密かにきゅうとしぼられる。ああ、この、感覚・・・・ 「俺のうち、おいでよ」 ほう・・・とまぶたが薄まった。 「土方くん。こっち」 駅の階段下で壁にもたれていた金時は、すこし眠そうな目で笑んだ。 「・・・仕事?」 「あー、ホストは休業中。今、店に顔出せないの。ま、色々あってね」 「色々って」 「男は秘密があった方が格好いいの」 話しながら歩いていく内に、どんどん路地の裏に入っていく。家と家を無理矢理敷き詰めた細い道を何度も曲がって、 帰れるかどうか心配になってきた頃、傾いたフィアットのクーペが見えた。どうも、無理矢理空いたスペースに乗り上げているらしい。 あと、センティアとSAABが行き止まりの道路で並んで、中がダンボールで埋まっていた。 「全部俺の」 その言葉に目を見開いている自分を促して、金時がおせじにも綺麗とは言えないアパートの階段を登っていく。 ・・・何で、あの車が買えて家がコレなんだ。 「入って」 玄関が開かれ、お邪魔した。 点きっ放しだったらしいテレビから、新世紀エヴァンゲリオンの台詞が、聞こえてくる。 狭苦しいから、後ろの金時が近い。 外で、カララ、とベランダの開く音がする。・・・・建てつけ悪そうだな、思っていると、 「・・・・・・あ、こないだ履いてた細いジーンズだ」 金時が、すぐななめ後ろで言った。 その手の爪が、ジーンズの後ろポケットにすこしだけ、ひっかかる。 ぴくり、と意識だけが反応して、そこに全部注がれた。 そのまま、長い指が腰の方へと、ゆっくり進んできて、肩口から傾いた顔にのぞきこまれる。 「・・・・・・」 彼のもう片手が、自分の後頭部の髪の中に差し込まれ、引き寄せられた。 開いた唇が触れ合い、しばらく口内で確かめ合った。だんだん首が後ろへ折れる。セックスへ向かうこの感じ。 「・・・・・ふ、」 離れた金時の頭が落ちてくるのと一緒に、ハァ、と犬歯が肩の肌を噛んだ。 「・・・・番号あげた後、ぜんぜん電話くれなかったよねえ・・・?」 「いや、それが、俺、ずっ、と・・・ッ、携帯、持ってなくて」 「・・・・・本当?」 「嘘ついて、どうすんだよ」 金時が首元からすこし顔をあげる。綺麗な青が自分を見すえる。 「じゃあ、いいの?」 「・・・・何が」 「して」 おい、とツッコミたくなった。こっちはもう初めっから、全くその気でいた。 例のピアノの子には手を出さない、とか何とか言って。 そんな相手だから、遠慮でもしてるんだろうか。 「・・・・ピアノ弾けるからって何だよ。俺だってただの男だよ、してェ奴としてェ」 言うと、金時は耳近くにあてていた唇で、なまめかしく首筋をたどった。喉を反って、目を薄める。 「何、土方くんは、俺としたいの? じゃ、して欲しいって言ってみて?」 「・・・・してえ、よ」 「して欲しい、でしょ?」 しまった、違う。コレ、単にセックスの始まりに、器用に組み込んでる。 鎖骨を舌先でなそる金時の低い声に、じんと肌がしびれる。 「・・・・・、しい」 「まあ、いいでしょ。ていうか、俺が限界。・・・くそ、ほんと無駄な我慢したな」 別段変わったように思えなかった声が聞こえたかと思うと、急にすごい力で両脇を抱えあげられた。 うあ、と立ち上がった体を、すぐ近くの壁に後ろ向きのまま押し付けられる。 いきなり何・・・・言おうとしたところで、背後からシャツの中で胸へと手が滑り、うなじを舐められると、んん、と声が出た。 器用にボタンを外され、ジーンズが下着ごと足元までずり落ちる。全部脱ぐより相当羞恥を煽って、引き抜こうとあげかけた足を、「ダメ」と抑えられた。 振り向こうとした後ろから、金時の唇が耳を食む。 「銀時もバック好きでしょ。立ったままはもうした?」 「は、・・・して、ね、」 「勿体無い」 腰を後ろへ引っ張られて、ずる、と下がった両手と額だけを壁にしっかりくっつけた。 「う、ァ」 中で這う指に、恥ずかしい体勢も、すぐに頭からどこかへ飛んでいってしまう。ていうか玄関の棚にローションがある時点で、いつもこんな事してんだろな。 どこに触れられても、なめらかな彼の指と舌の動きに熱のこもった息を吐く。 金時は、あらゆる絶妙なタイミングを、知ってる。 このまま体が溶けていきそうだ。 こんなに艶やかな熱さで満たされるセックスは土方は他に知らない。 どうにかなる。 「は、ねえ、高杉と銀時ってどんな感じにする?」 「ん、ァ」 「例えば、こォー・・ゆうの。してくれる?」 「ン、ぅ」 「3Pした?」 変っ・・なことばっか聞くなよ、アホ。 中へと入り込んでくるその感じに、壁に指を立ててまぶたをきつく閉じた。 「ァ・・・・ア」 開いた口を後ろから金時の手で塞がれた。 「ここ、壁薄いから」 ・・・そういうことはもっと早くに言ってくれ。 口内に押し込まれた指の苦しさに、涙の膜が増えた。 両手を壁についたまま、彼のその中指を快感に冒された舌先だけで舐める。 「かわい」 金時が、わずかに乱れた息の間でそう言った。すこし振り返ると、前髪の下から口はしだけあげた顔があった。声が出ないよう唇を噛む。 「う、んッ・・・ん!」 いく瞬間、顎を親指でななめ上に向かされ見つめられた。 「ふ、初めて会った時から、見たかったんだ、コレ」 すこししてから、引き抜かれ背中に生ぬるさを感じる。 トン、とこちらに寄りかかる金時の息を聞きながら、余韻にひどく、ぼう、とした。 「あいつらとどっちがよかった?」 「だから、そういうこと聞くなよ・・・・それぞれ全然違ェからわかんねェ」 「しばらく頭どっか行ってたくせに。救急車呼ぶとこだったよ」 アホか。煙草の煙が、ベランダからの昼下がりの光だけに頼っている部屋で立ち昇っていく。 彼のこげ茶のベッドは落ち着いた色をしていて、体に居心地よかった。 ゲイリー・バートンとチック・コリアの曲が、床に置きっぱなしのパソコンから流れていた。 次に、ギターの入った曲が聴こえ出す。 彼の背中にうつぶせで半分乗っかったまま、金に派ねた髪を手で遊ぶ。 「こいつ、誰」 「ウォルフガング・ムースピール」 「噛みそう」 「でも、ムースピールってなんかよくない?」 「音?」 「語感」 「語感かよ。・・・好きなギターって誰?」 「うーん、ジョン・スコフィールドかな。好きっていうか憧れる。偉大な人だからね」 マッサージでもされているような格好で顎の下に手を敷いていた彼がこちらを見る。 キスをされる。もう一度。髪先をつまんで親指で撫でられる。 「いい匂い」、彼の声が低いジャズの音色に包まれる。時間にとろけそうな瞳をうっとりと閉じた。 「あ〜あ今夜だけ〜ただいまァ・・・」 ・・・・・あれ。坂田は、山本リンダを口ずさみながら家に帰ってきて、まばたきをした。 「めろ、って、疲れてんだよ」 リビングで、土方が、珍しく高杉を嫌がっている。 押し倒された足をばたつかせて、高杉の右肩が丸見えになるほど服を引っ張っていた。 「んなこた、知らねェ」 「知らねーって、おま、自分がそういう時はやらせねーくせに、あっ、やめろ」 言いながら暴れていた土方は高杉の技術に、うう、とだんだん負け始め出した。 ふとテーブルの上の携帯に目をやると鼻歌になっていたリンダも止まる。土方のだ。 ストラップがついていた。 結構前、缶コーヒーについてた小っちゃい車のヤツ。いい大人が何ムキになって集めてんだよ、と金時に言ったことがある。 「・・・・・土方、コレどうしたの」 自分でも、酔いのいい気分が一気に醒めたと思った。 高杉から何とか一時は脱出したらしい土方が(色々学習はし始めたらしい)、 それでも床に座ったまま台所へじりじり追い詰められながら、「何がだよ」、反射的といった感じで答える。 金時と一緒に暗い部屋中で座り込んでいた光景がパッと走った。 「・・・・・・・」 ・・・あの日は。 本当に金時が先に手を出したんだろうと信じた。土方も実際酔ってた。 金時のことなんか目にも入ってなかった様子をしてたから、けど、酒がまわってすこし絡んでしまって、あんな感じになったんだろう、と思ってた。 でも、俺の知らない内に、金時が何かしてないとは、全然限らない。 そういや、今日は昼から居なかった。 いつもは自分から襲うくせに、高杉を腕で避けている。 『疲れてんだよ』? なんなんだろう、俺の、この、説明ができない、この感じって 「・・・高杉ちょっと、退いてくんない」 ああ? と振り返る高杉の体をちょこんと横へ押しやり、土方の顔横に手をついた。 いきなりの音に、土方の肩がびくと跳ねた。 ・・・何事だ、という瞳ですこし眉を寄せてこちらを見上げる。その驚いてる感じが妙に腹立つ。 「ッ・・・・たッ!」 その腕をねじるようにして、うつぶせにした。ゥ、と、床につけられた土方の頭が急な痛みに耐えている。 「お前、金時としたの?」 その痛がる体を、見下してる自覚があった。 「関係、ねー、だろ」 干渉するなと怒っているその目。暗に肯定してる。 「俺と高杉相手にしてるくせに。それでも足りねえのお前」 俺たちに女がいて、何で自分にいちゃダメかって聞いてたっけ。 お前はすでに対2人じゃん。3人必要ってどんなアバズレ? 指が侵入すると、土方の背中が震えた。 その後ろでひねった片腕を掴んだまま、乱暴に、けれど、いつも以上に土方のいいように動かしてやる。そうしながら、よじろうとする体を体重で上から押さえつけた。 「んン、ッは、」 「勃ってっけど。金時としてきたばっかだからもういいんじゃなかったっけ」 「・・・・ッ、ァ」 土方の中に自身をねじ込めば、そうやってちゃんと声を出す。俺の動きに合わせて黒い頭と髪先が壁に当たった。 そのくせ、しっかり快楽を見つけてる。 ・・・それでも、他も欲しいのかよ。興味なさげだった軽薄なあいつにまで足開いて。結局こんなの誰でもいいの? 上半身をゆっくり土方の方へ傾け、耳元へと心底冷えた声を落とした。 「淫乱」 何ていうか、サイテーだと思う、お前 土方の瞳の時間が一瞬止まったのがわかった。 それからは、意地のようにできる限り声を殺して悔しそうに喘いだ。 「・・・・俺、3日ほど出てくるから」、土方はそう残して家を出た。 ソファーに寝転がって、自分の足先を見ながら玄関の閉まる音を聞く。 「家出はごめんっつってたの誰だよ」 高杉が肘掛けに曲げた片足で座る。 ・・・・別に今回は本当に、単なる家出だろ。 わざわざ3日っつって出てったし。しばらく、実家に帰らせていただきます的な。 「3Pのことでは俺責めたくせによ」 ・・・そうだよ。もうあんなひどいことはしないと確かに思った。今日だって、帰って来るまでは、彼女と居酒屋で飲んで、 歌を歌うくらいご機嫌だった。 ・・・・・・わっかんねェ・・・ 額に手を当てる。 俺だって彼女がいる。しかも、珍しく恋して楽しい。 それが、何だって土方の男のことで俺がこんなに揺さぶられなきゃなんないんだ。 土方って、何なんだ一体・・・・・・・ 「・・・・・で? おいよォ、銀時。どうしてくれんだ俺の方は」 高杉のすごく低い声に、ぴた、と思考が止まった。 あ、しまった・・・・。そうだ、高杉の邪魔をしてしまったんだった。つい押しのけて自分がしてしまった。しかも、土方はもう出てってる。 そろり、手の下から彼の顔を見上げる。 チリ、と痛い空気が高杉の周りで渦を巻いている。 ・・・・やっべ。 久々に喧嘩の予感だ。 「は、はァ、は、ちょ、ちょ待って・・・・一時休戦、チャイム鳴ってる・・・」 坂田は壁に背中をつけて、肩を上下させながら、俯いた頭で手の平を前に出した。 リビングはえらいことになった。 まず一番初めにソファーがひっくり返った。次に、でかい棚が倒れた。CDが割れた。自分で踏んでおいて、そこで高杉が更にキレた。 皿は飛んでくるわ、美術画を外してバコン殴るわ、ハサミで突きを繰り出すわ、途中からは何か柔道になった。 足を払われたところで背負い投げされた。見事な一本だ。 チャイムの主は下の人だった。 高杉の頭に手をやって、 「や、ほんっとすいまっせん。や、何つうか、その、ロ、ロッキー? 観てたら、こう、熱く盛り上がっちゃって、いやはい、ついはしゃぎすぎました、ええ・・・・」 自分と一緒に下げさせた。 下の人は、「まあ、ロッキーなら仕方ないよねえ」、と妙に納得して帰っていった。ロッキーは偉大だった。 高杉と横目を交し合って、・・・・くそ、髪をかきながら中へ戻る。 ソファーだけ起こして、しばらく転がる。 「あー・・・・・サイテーなのは、完全、俺だよ・・・」、目を閉じて一人つぶやいた。 → ← |